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なぜ、タイのサッカー少年たちに国籍がなかったのか?

なぜ、タイのサッカー少年たちに国籍がなかったのか?

記事の紹介

 

回は、毎日新聞社さんの記事、「洞窟の無国籍4人にタイ国籍を付与」のご紹介です。

 

 タイ政府は北部チェンライ県の洞窟から救出された少年ら13人のうち、無国籍だった4人に国籍を付与した。国境地帯の山岳民族や外国人労働者の多いタイには無国籍の人が多数おり、国籍の取得を長期間待っている人も多い。タイメディアによると8日に洞窟の地元メーサイで式典があり、少年3人とコーチを含む計30人にタイの身分証明書が授与された。

 タイで生まれれば原則としてタイ国籍を取得できるが、山岳少数民族やミャンマーなどから来る労働者やその家族らの中には、国籍の取得要件を満たせず、無国籍状態に置かれている人が多い。タイ国籍の取得手続きには段階を踏んで長い年月が必要だ。

 ミャンマーからタイに逃れた少数民族の両親の元に生まれ、小学生だった2009年、タイ政府が無国籍のため特別に発給した臨時旅券で日本に行き、紙飛行機大会に出場を果たしたモン・トンジーさんは「彼らの国籍取得はうれしく思う。私はまだ役所の判断を待っているところだ」と話している。

≪つづく≫

 

詳しくはこちらへ↓

 

 

タイの少数民族

 

人口が日本の約半分の約7000万人、面積は51万3,120㎢の日本の約1.4倍のタイの中には多くの民族が生活しています。

 

その中で最も多いのが、約85%を占めるタイ族で、他に約200年以上前に中国南部から南下し、ミャンマーやラオスを経てタイ北部に辿り着いたとされる、アカ族カム族カレン族ティン族マラブリ族ミェン族モン族ラフ族リス族ルワ族などの少数民族が93万人程ほどおり、全人口の約1.5%であると言われており、現在でも、その一部が山岳少数民族として山奥で生活をしています

 

 

 

山岳少数民族について言うと、こちらでも以前、紹介したように、山岳少数民族は伝統的に焼畑農業を生業としていましたが、大量の森林伐採や焼畑などで森や水源が枯渇してしまうことから、他の地域と比べて貧困率が高くなりアヘンの原料となるケシの栽培が主な収入源となっていく中で、タイとミャンマー、ラオスの3国がメコン川で接する山岳地帯は、「黄金の三角地帯」は、別名「ゴールデントライアングル」と呼ばれ、世界最大の麻薬密造地帯と称されるようになりました。

 

 

 

東西冷戦下、ベトナム戦争の時代には山岳少数民族と中国やラオスからの共産主義が結びつくことを警戒して、タイ政府は山岳少数民族への同化政策を推し進め、1958年になると、ケシ栽培を禁じ、伝統的な焼畑農業を止めさせると同時に低地への再定住を促しましたが、依然として長らくケシ栽培が行われ続けられていたことからも、山岳少数民族はタイ族や他の一般的なタイ国籍保有者から差別を受ける傾向にあったのです。

 

 

このような中で、この地域を訪れられた、前国王ラーマ9世の母、メーファールアンとも呼ばれるシーナカリン王太后が、自分たちの栽培したケシで密造されたアヘン中毒で苦しんでいる人々の現状をご覧になったことから、荒廃した地域を再生すべく、メーファールアン財団を立ち上げられました

 

これは、山岳少数民族の文化を守りつつ、社会的、また経済的に生活を安定させ、且つ、森林を再生させるという、人と自然が共存しながら発展することを目指した「ドイトゥン開発プロジェクト(Doi Tung Development Project )」と呼ばれるもので、ケシ畑をコーヒー農園やマカデミア農園などに転作する支援を開始されました。

 

現在では、「ドイトゥン(Doi Tung )」「DOI KHAM(ドイカム)」などタイの王室が出資して、タイ国民の生活向上や健全化に向けて行われているプロジェクトである「ロイヤルプロジェクト」により山岳少数民族の人々が生産したコーヒーやマカデミアのみならず、織物や陶器、和紙、ラン、などをタイ全土で目にすることができます

 

 

山岳少数民族と国籍

 

1974年にタイ政府は山岳少数民族にも国籍を与えることを決議したのですが、記事にもあるように、山岳少数民族やミャンマーなど近隣諸国から労働のためにタイへ移住する方やその家族らの中には、国籍の取得要件を満たせず、無国籍状態に置かれている人や、国籍の取得要件を満たしていても、国籍を取得するためには、出生届を役所に提出することで市民権があることを証明する身分証明書を得る必要があることに加えて、山岳少数民族が高地で生活するにあたって高地民居住許可証も取得しなければならず、居住地から遠く離れた町まで手続きに行く時間的・金銭的コストの負担は重いこと、さらには、これらは山岳少数民族のみならず、スラムに居住している人々にも言えることですが、出生届を出す習慣がないといったことや、貧困が原因で教育が受けていないことから出生届の重要性を理解していないという例も多数存在し、いずれにせよ、子供が生まれた際に出生届を提出しなかったことが大きな原因でタイにはタイ国籍を持たない多くの人が存在し、現在でも山岳少数民族の4分の1は無国籍状態にあるといわれています。

 

このように、山岳少数民族の4分の1は無国籍状態にあるといわれていますが、無国籍の人々はどこにも登記されないため、正確な数字はわからず、あくまで推定で45万人から65万人程のようです。

 

 

また、タイは「タイ王国」が成立する以前から移民流入が多かったなどの理由から、長い間タイの国籍法は「父系血統主義」を採用しており、父親が外国人の場合、タイ国籍を持つことができなかったのですが、1992年から「出生地主義」を採用しており、両親の父母のタイ国籍の有無にかかわらず、タイで生まれた人は原則としてタイ国籍を取得する権利があり、また、タイ国外で出生しても、父母のいずれかがタイ国籍保有者であればタイ国籍を持つことができるようになり、2008年には国籍法が改正され、過去に遡って父系血統主義によりタイ国籍を取得できなかった人や剥奪された人が、改めて国籍を取得することができるようになりました

 

それに加えて、近年では、自宅出産が減り、低所得層向けの保険の充実などから病院で出産が行われることが増え、出生時に病院が出生届の代行を行い、退院時に出生証明書が受け取れるのが一般的になっており、無国籍者は今後減っていくことが予想されています。

 

 

 

こちらでも紹介し、世界中で注目を集めてたタイ北部チェンライ県の地元サッカーチームの少年12人とコーチの13人が洞窟探検へ出かけ、大雨による洞窟内の増水で取り残された事件で無事に救出された13人のうち、4人が無国籍だったというのは、このような背景があります。

 

この少年たちは入院していたことから、招待されていたロシアワールドカップ決勝戦は現地で観戦することは叶いませんでしたが、他にもヨーロッパなどからサッカー観戦への招待状が多数届いているようで、無国籍ではパスポートの取得が困難であることからタイ政府の対応が注目されていました。

 

無国籍では、パスポート取得が困難であるだけではなく、土地を所有することができなかったり、教育や医療を十分に受けることができなかったりなどといった問題も出てきます。

 

これを機に、タイの国籍問題が解決に向けて前進していくと良いですね。

 

おわりに

 

それでは、本日のまとめです!

 

・ タイには、人口約7000万人のうち、その約85%を占めるタイ族で、他にはアカ族、カム族、カレン族、ティン族、マラブリ族、ミェン族、モン族、ラフ族、リス族、ルワ族などの少数民族が93万人程ほどおり、全人口の約1.5%である

・ 少数民族の中の一部が山岳少数民族として山奥で生活をしており、長らくケシ栽培が行われ続けられていたことからも、山岳少数民族はタイ族や他の一般的なタイ国籍保有者から差別を受ける傾向にあった

・ 山岳少数民族やミャンマーなど近隣諸国から労働のためにタイへ移住する方やその家族らの中には、国籍の取得要件を満たせず、無国籍状態に置かれている人が存在し、現在でも山岳少数民族の4分の1は無国籍状態にあるといわれている

 

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